【お題:相性抜群・温かさに満ちた将来・鍵のかからない部屋】
【時間:ー】
◆◆◆
会社の仕事を定時で終えて、コンビニで煙草と焼き肉弁当をふたつ買ってから帰宅すると、陸はいつのようにリビングでノートパソコンに向かいあっていた。
「おかえりショウタ」
陸は画面から顔を上げるといつものように最高の笑顔で俺を迎えてくれた。
「ただいま、弁当買ってきた」
テーブルの上にコンビニの袋を置くと、陸は立ち上がった。
陸は袋の中身を見て、あ、やった今日は焼き肉じゃんと呟いた。俺は陸のこういうところが好きだ。陸のさりげない仕草や言葉が、俺の支えになっている。本人は気づいてないかもしれないけど。
陸は顔を上げて俺を見た。
「ショウタもすぐ食べる?」
「ああ」
軽く頷くと、陸はニコリと笑った。
「じゃあ、チンしておく、ショウタは着替えてきなよ」
「ありがと、じゃあそうする」
マフラーを外しながら、自分の部屋のノブを回すと違和感があった。
「ん?」
思わず首を捻ると、後ろから陸の声が聞こえた。
「どうした?」
「なんかドアノブの調子おかしい、引っかかりがないっつーか」
「まぁ、このマンション古いからなぁー、いろいろガタが来てるよね」
「そうだな」
パタンとドアを閉める。ドアの向こうからは陸がキッチンで水を流す音や足音が聞こえてくる。
上着を脱ぎ、マフラーと一緒にハンガーにかける。
そして堅苦しいスーツを脱ぎ始めた。ネクタイを外しながら自分の部屋を見渡す。我ながら、簡素な部屋だと思う。陸には、何もなさ過ぎて落ち着かないと言われた。俺とは反対に、陸の部屋は物で溢れている。本、雑誌、フィギュア、用途のわからない専門機械。陸には収集癖がある。
俺たちは正反対だからうまくいっている。そんな気がする。俺とまったく同じ性格の奴だったなら、毎日、主張の押し付け合いで口論になっていることだろう。
俺と違って陸はこだわりが無くて柔軟だ。こうして2人が今まで何事も無く、いや、何度か破局の危機になるような喧嘩もあったが、こうして5年も一緒に暮らしていられるのは陸のお陰だと思う。
部屋着に着替えて、ノブを回す。
「……」
やはり、おかしい。シリンダーが壊れたか?試しに内鍵をかけて、ノブを回しみる。内鍵をかけたはずなのに、ドアはあっさりと開いてしまった。
リビングに出ると、陸がテーブルに温めた弁当と、2人のマグカップを並べているところだった。
「陸、俺の部屋、鍵壊れた」
「え、まじ?」
「まじ」
頷きながら、陸の向かいの椅子を引いて腰掛ける。
「今日はもう遅いからアレだけど、明日、管理人さんに電話して修理お願いしておこうか?」
「あー、そうだなぁ」
陸の言葉に、視線を上にあげる。
「いや、いい」
「え?いいの?」
陸がテーブルに肘をついて首を傾げた。
「だって、必要ねぇだろ」
そう答えると、陸は花が咲いたような笑みを俺に向けた。
「どうした?」
陸に聞き返す。すると、陸はへへへと笑いながら「やっぱショウタ好きだなって思って」と言った。
俺は気恥ずかしくなって、頬を掻いた。
「なんだよ、それ」
「そのままの意味だよ、冷めちゃうから食べよ?」
陸は顔の前で手を合わせてから、ちらりと俺を上目遣いに見た。俺も陸と同じように手を合わせる。
「いただきます」
2人の声が重なる。
こうして陸の俺の生活は続いていく。これからも。

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