悟られないように

【お題:悟られないように】
【時間:ー】

◆◆◆

「ふぅん、なるほどね」
午後6時過ぎのマクドナルド。いつしか毎週水曜日は二人でビックマックセットを食べながら愚痴を言い合うのが日課になっていた。
ミキの愚痴はいつも彼氏の愚痴だ。いや、愚痴というよりノロケなのだけど。
「だからさ、アイツがクラスの友達と遊びに行くときの報告は、LINEで『ごめん、今日はクラスの奴らと遊んでくる』の一言なの、そのメンバーに女がいてもね、私はそれで許してあげてるのね?」
ポテトを次々と口に放り込みながら、彼女は話し続けた。
「でさ、私が、『ごめん今日はクラスで集まるから遊べない』って言ったらさ、アイツ、誰が参加するの?男はいんの?どこで遊ぶの?何時に解散するの?写真撮って送れとか言ったりしてくるわけ、普通に嫌じゃん、束縛しすぎじゃない?文句言ったら、その10倍くらいさらに文句言われてさ、なんかおかしくない?」
「まぁ、彼の気持ちもわからるけどね」
そう答えてファンタを啜った。氷が溶けてすっかり味が薄くなってしまっていた。
「えぇ、エリは彼の肩をもつわけ?」
彼女は不満そうに頬を膨らませた。口の端にポテトのカスがついている。そういう抜けているところがとても可愛いなと思った。
「肩をもつっていうか、まぁ、ミキモテるじゃん?だから不安なんでしょ?」
「はぁ?モテようが関係なくない?だって、今私はケンちゃんと付き合ってるんだから、私にとってケンちゃんが一番ってことじゃん、不安になりようがなくない?」
彼女の純粋で擦れていない発言に思わず笑ってしまう。ミキはモテるのに全然そういう擦れたところがまったくない。そういうところが、さらにモテるんだけろうけど。
「そう思えるのはミキだけだよ、なかなか信じることができないことあるんだよ……というか、ケンちゃんの場合、ミキのことが信じられないっていうより、自分のことが信じられないんじゃないかな?」
「へ?どういうこと?エリって時々難しいこというよね?」
そう言って彼女はまたポテトを口に放り込んだ。

誰も気づいていない。私がずっとミキのことを恋愛対象として見ていることを。そして同性だということを利用して、彼氏持ちの女の子を毎週水曜日に独占していることを。
あの嫉妬しやすいケンちゃんも、私と彼女が一緒にいることは気にもとめないのだ。私が女だから。ケンちゃんはバカだなと思う。
これからも、この想いは隠し続けるつもりだ。
私はミキを心から愛している。この先、たとえ彼女が誰と付き合おうと、結婚しようと、子供が生まれようとそれで構わない。それが彼女の選択であるなら受け入れよう。それが本当に愛するということだ。それを受け入れ続ける限り、私は彼女のそばにいられる。彼女にとって一番の親友でいられる。
これからもずっと私は彼女のそばにいる。
決して悟られないように。

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