3年目の告白

【お題:三年目の告白】
【時間:ー】

◆◆◆

「うおぉ、まじ緊張してきた、やっぱやめようかな」
俺は、田嶋とともに旧校舎へと続く渡り廊下を歩いていた。体育館ではたった今卒業式が終わったばかりだ。俺たちは今日、この中学校を卒業する。中学校最後の日に、俺は、一大決心をした。
ミクちゃんに告白する!
一週間前から田嶋と一緒に作戦をたて、ついに今日が本番だ。ミクちゃんの下駄箱に「卒業式終わったら旧校舎2階の視聴覚室に来て下さい」と手紙を入れておいたのだ。その手紙はちゃんとミクちゃんが開封したのは、田嶋が確認している。

視聴覚室の前までやって来ると、田嶋は「僕は、隣の空き教室で待ってるから」と言って、隣の教室に姿を消した。
俺はひとり、視聴覚室の扉を開けた。ミクちゃんはまだ来ていないようだった。
「……緊張してきた」
俺は必死にセリフを頭の中で繰り返して練習する。「ミクちゃん、入学式の時から好きでした、付き合ってください」「ミクちゃん、入学式の時から好きでした、付き合ってください」……。よし大丈夫だ。落ち着いて言えば大丈夫、きっとミクちゃんも俺の気持ちを受け取ってくれるはず。
その時。
ガラリとドアが開いた。
俺は俄に緊張する。カーッと顔が熱くなる。やばい、どうしよう。やっぱ告白なんてやめればよかったかな。いや、ここで諦めたら駄目だ。
「ごめん、ミクの代理で来ました、吉谷です」
そこに立っていたのはミクちゃんの親友の吉谷さんだった。
「え?」
俺は思わずポカンとした。
「ミク、どうしても外せない用事があって、来れないって言ってました」
「え?来れないの?」
吉谷さんは淡々とした口調で言った。
「うん、それから佐藤くんへ伝言があります、気持ちは有り難いけどごめんなさい、だそうです」
「え、あ、う、うん、そっか……」
「伝言は伝えました、それじゃ」
吉谷さんはそう言うとドアを閉めて出て行った。
「……」
思わず俺はその場にしゃがみこんだ。恥ずかしい。一人で盛り上がってた自分が恥ずかしい。まさかこんな結末になるなんて。
ガラリと再びドアが開いた。そこに田嶋が立っていた。
「田嶋……」
「だいたいのことは聞いてた」
田嶋はそう言うと、俺のそばにやって来た。
「大丈夫そ?」
「全然大丈夫じゃない、今すぐ消えたい」
「……まぁこういうこともあるよね」
田嶋は俺の隣にやって来ると、胡座をかいて座った。
俺はため息をついて体育座りをすると、膝の間に顔を沈めた。
「最悪だー、試合場にすら立たせて貰えなかった。こんなことってあるんだな、不完全燃焼だし、すごい惨め、俺の3年越しの告白が、こんな形で終わるなんて……」
「ドンマイ、高校にもっといい女いるよ、きっと」
「……無理だよ、どうせ、こんなチビで地味な男なんて、好きになってくれる奴なんかいないんだ、最初から結果は決まってたんだよ」
「いや、お前のこと好きな奴いるよ」
「え?」
田嶋の言葉に俺は顔を上げた。田嶋は俺の顔を覗きこむようにして言った。
「お前のことを誰よりも一番に思っている奴もいるよ」
「ホントかよー、どうせ俺を慰めるための嘘だろ?いるなら今すぐここに連れてきて欲しいわ」
「もういる」
田嶋は悔い気味にそう言った。
「へ?」
俺は聞き返した。
「ここにいる、お前のこと、世界で一番好きな奴が」
田嶋はそう言うと、じっと俺を見つめた。
「え?……えっ?どういうこと、まさか……いや、それはないか」
「そのまさかだよ」
田嶋はそう言うと、俺の腕を引っ張った。
「おい、ちょっと……んっ」
唇に柔らかな感触が重なる。
「え?え?なに?」
混乱する俺を余所に、田嶋はいつものペースを崩さない。
「僕、入学式の時から好きだったんだよね、お前のこと」
「はっ?ま、まじで言ってる?」
「うん、マジだよ」
田嶋は再び俺の手を引いて、口づけた。
ゆっくり顔を話すと、俺の頬に触れながら言った。
「必ず幸せにしてみせる、だから僕と付き合わない?」
不思議と嫌な気はしなかった。
……コイツとなら付き合ってもいいかも。
そんなことを真剣にそう思っている自分自身に気づいて、ただただ驚いた。

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