即興小説

ふたりの部屋

【お題:相性抜群・温かさに満ちた将来・鍵のかからない部屋】【時間:ー】◆◆◆会社の仕事を定時で終えて、コンビニで煙草と焼き肉弁当をふたつ買ってから帰宅すると、陸はいつのようにリビングでノートパソコンに向かいあっていた。「おかえりショウタ」陸…

新しい生活

【お題:『ムカデ』『包丁』『目玉焼き』】【時間:ー】◆◆◆心地よい風を頬に感じて、目が覚めた。こんなに目覚めの気分がいいのは何年ぶりだろう。笑みを浮かべながら体の向きを変えた。畳の上に敷いた布団は近くのホームセンターで5000円でかった安物…

夏休みの終わり

【お題:夏休みの終わり】【時間:ー】◆◆◆「夏休みも終わりか」冷房の効いた部屋でベッドに横たわっていた僕は、カレンダーを見て呟いた。ごろんと体の向きを変えて、窓の外を見る。どうやら外は30度を超えているらしい。暑さのせいで窓から見える景色は…

頼もしい背中

【お題:『ガラスのハート』『心のときめき』『捻じ込んだ』】【時間:ー】◆◆◆昔から僕はオロオロしているせいかイジメの対象にされやすかった。友達の些細な冗談も真に受けてしまい、必要以上に傷ついたり落ち込んだりすることが多かった。「コウはガラス…

悟られないように

【お題:悟られないように】【時間:ー】◆◆◆「ふぅん、なるほどね」午後6時過ぎのマクドナルド。いつしか毎週水曜日は二人でビックマックセットを食べながら愚痴を言い合うのが日課になっていた。ミキの愚痴はいつも彼氏の愚痴だ。いや、愚痴というよりノ…

甘酸っぱい?苦いだけ

【お題:甘酸っぱい?苦いだけ】【時間:ー】◆◆◆甘酸っぱい青春時代の失恋は、いつか大人になった時に宝物になる。そんな言葉をどこかの誰かが言っていたが、そんなのは綺麗事だ。初恋相手の好きな人が、私の親友だった。私の恋を応援してくれると言ってく…

3年目の告白

【お題:三年目の告白】【時間:ー】◆◆◆「うおぉ、まじ緊張してきた、やっぱやめようかな」俺は、田嶋とともに旧校舎へと続く渡り廊下を歩いていた。体育館ではたった今卒業式が終わったばかりだ。俺たちは今日、この中学校を卒業する。中学校最後の日に、…

ひつじ風呂

【お題:『CD』『牛乳瓶』『羊』】【時間:ー】◆◆◆「疲れたぁ」駅の階段を降りながら、思わず独り言を呟いた。チーフの小林さんが休暇を取っている今日に限って、予約無しの客がひっきりなしにやって来て、しかも縮毛やカラーを注文する客がやたらと多く…

悪夢

【お題:『風邪』『ノイズ』『ムカデ』】【時間:ー】◆◆◆気づいたら、知らない場所にいた。どこかの地方都市のようだ。妙に薄暗い。曇り空。人はそこそこ多いのに、何故か活気がない。人々の顔には靄がかかっているように、ボンヤリとしていて表情が見えな…

無意識の恋

【お題:無意識の恋】【時間:ー】◆◆◆上野商店の扉を開けると、レジで雑誌を読んでいる黒眼鏡の男がいた。おでこの上にはヘアバンド。男にして長い髪をまとめている。今日もよれよれの黒いジャージを着ている。部屋でくつろぐための格好だ。いくらド田舎で…

新しい扉

【お題:『名刺』『責任』『変態』】【時間:ー】◆◆◆「〇〇商事 加藤と申します」商談のためにやって来た会社で、滅茶苦茶好みの男に出会った。加藤という男とは、今までメールでのやり取りはあったが、こうして顔を見るのは初めてだった。清潔感のある髪…

戦略家

【お題:『チェス』『まとめ』『リスク』】【時間:ー】◆◆◆授業を終えた私は、急いで教室を出て渡り廊下を抜け、生徒会室のドアを開いた。「ああ、有馬さん、早いね」副会長の吉澤先輩が出迎えてくれた。吉澤先輩はいつものように窓際の椅子に腰かけていた…